沖縄赤十字病院

健診センターの取り組み ①

診療案内健診センターの取り組み ①

無症候性心筋虚血評価のための胸部単純心臓CT検査の石灰化スコアの有用性について

2026年4月28日 健康管理センター長 田中道子

 

沖縄労働局の発表によると、沖縄県の定期健康診断での有所見率が全国最悪を記録し、県が目指す健康長寿が危機的状況にあることが浮き彫りになり、生活習慣病を改善する取り組みの重要性がますます高まっています。

 健康診断の精密検査受診率の低さに対する、当センターの対策や試みについて報告してきました。今回は、特に力を入れている循環器疾患の早期発見のツールとして使用している「心臓健診オプション検査」について説明します。

心臓検診オプション検査は#1循環器セット1、#2循環器セット2、#3循環器セット3があります。

循環器セット3には心臓超音波検査、NT-proBNP(血液検査:心機能の指標)が含まれます。心雑音、心電図異常、心拡大、不整脈などを指摘されたことがある方にお勧めで、心臓ポンプ機能、心筋の状態、心臓弁膜症の評価に役立ちます。これまでにも、心臓超音波検査による、肥大型心筋症、拡張型心筋症、弁膜症や先天性心疾患などが発見され治療につながりました。

 循環器セット2は、頸動脈超音波検査、血圧脈波検査(ABI/CAVI)、EPA/AA比(血液検査)が含まれます。動脈硬化が気になる方にお勧めで、全身の動脈硬化の状態や程度の評価につながります。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、高尿酸血症、CKDなどの動脈硬化の危険因子を有する方の生活習慣病の振りかえりや治療のきっかけになります。

 循環器セット1は循環器セット2に加え冠動脈石灰化スコア(CACS)が含まれます。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が気になる方にお勧めで、無症候性心筋虚血の検出に役立ちます。

これまで、冠動脈石灰化スコア(CACS)について研究発表を行い、そのデータを元に受診者に検査をお勧めしていますが、今回は冠動脈石灰化スコア(CACS)がについて当センターの研究についてレビューを行いたいと思います。

 

欧米を中心に、単純心臓CT撮影により算出される冠動脈石灰化スコア(CACS)

を用いた心疾患患者の診断や、心血管イベントの予後推定に関する報告が多数なされ、将来の心血管疾患リスクを評価する方法として確立してきています。

 当健康管理センターでは、がんの早期発見のみならず、種々の循環器疾患・心血管疾患の早期発見、予防、治療介入に力を入れてきました。2013年に人間ドック心臓検査のオプション検査を確立し、生活習慣病や心血管疾患の評価、治療の必要性の動悸付けのツールとして用い、特に冠動脈石灰化スコア(CACS)により無症候性心筋虚血の検出につとめています。

これまで発表してきた日本心臓病学会や学術集会や日本総合検診医学会での報告をまとめました。

【目的】人間ドックの心臓検診受診者で、胸部単純CT検査を用いて測定する冠動脈石灰化スコア(CACS)と冠動脈疾患や冠危険因子との関連について検討しました。

【対象及び方法】2013年10月から2019年3月まで当院の人間ドック受診者のうち、心臓検診として心臓CT検査を施行した381名で、心電図同期単純CT検査のCACSがAgastonスコア400以上を要精密検査とし、当院で心臓カテーテル検査(CAG)が施行できた症例について報告しました。。

【結果】CACS400以上で要精密検査は38人(平均年齢64歳、男性34名、女性4名に)、当院でCAGが評価できたのは22名(平均年齢64歳、男性19名、女性3名)。典型的な胸部症状を有するものはいませんでした。有意狭窄病変を有する症例は20名(91%)。そのうち14名(61%)が多枝病変を有しました。全員が冠動脈危険因子を有し18名は複数の危険因子を有し、高血圧症、脂質異常症、肥満が多く認めました。多枝病変ほどCACSは高値でCACS1000以上のものは3個以上の危険因子を有しました。22人の治療方針は冠動脈バイパス術5名、経皮的冠動脈インターベンション6名、内服継続/強化11名でした。


【考察】人間ドックのオプション検査として施行したCACS高値例の中で、当院でCAGを施行した症例のいずれも治療介入を要しました。循環器脳卒中基本対策法が成立し、循環器疾患の早期発見、予防、治療介入が注目されていますが、効率よく早期治療介入が必要な高危険因子保有者を特定するための検査についての日本独自のデータベースがないのが現状です。しかし戦後本土より早いアメリカ型食生活より欧米の生活習慣に近いメタボリック症候群先進である沖縄県で、CACSは冠危険因子を有する症例の冠動脈疾患のスクリーニングとして有用と考えます。

以上が学会発表・論文発表の内容のまとめです。沖縄県は長寿県として知られていましたが、男性の平均寿命がいっきに26位に転落した 2000年の沖縄クライスを機に、生活習慣病に由来する動脈硬化性疾患の先進県として注目されています。全国一の肥満県で、沖縄県男性の定年前に心血管疾患により死亡する割合が全国第一位です。

 当健康管理センターでは、今後も人間ドックの心臓検診の循環器セットを活用し、沖縄県民の健康寿命延伸のために、生活習慣病を改善する取り組みと心血管疾患の早期発見に努めていきたいと思います。